[ミーシャ] ミーシャ : 風が吹き、寒さが街に運ばれる

[ミーシャ] ミーシャ : 寂しい街並みの中で、一人

[ミーシャ] ミーシャ : ただ一人、少女が立っている

[ミーシャ] ミーシャ : 「…嫌な雰囲気が、する」

[ミーシャ] ミーシャ : ここ最近、胸のわだかまりのように嫌な気配を感じる

[ミーシャ] ミーシャ : それは、自身の血によるものでもあるだろうし、過去にも似たような経験はあったが

[ミーシャ] ミーシャ : 今回のソレは、これまでになく鮮明で

[ミーシャ] ミーシャ : 色濃い、不安さを搔き立てている

[ミーシャ] ミーシャ : 今や孤独の身で、しかし身体に残る"何か"に左右されていた人生だったが

[ミーシャ] ミーシャ : 一つわかる

[ミーシャ] ミーシャ : 近いうちに、良くないモノに相対するのだろう

[ミーシャ] ミーシャ : ……

[ミーシャ] ミーシャ : これも

[ミーシャ] ミーシャ : 私の罪なのだろうか?

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ :

[ミーシャ] ミーシャ : 寂れた道の先、冷たい一つの家

[ミーシャ] ミーシャ : 人目を憚るような一軒で、少女は息を潜める

[ミーシャ] ミーシャ : 全ては、繋がってしまった

[ミーシャ] ミーシャ : 人聞き、さらに人聞きだが

[ミーシャ] ミーシャ : ここで策される、一つの"戦争"

[ミーシャ] ミーシャ : それは、既に始まっていて

[ミーシャ] ミーシャ : …私も、その中の一人なのだ

[ミーシャ] ミーシャ : 「…確かめるのは、済んだ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「予感は、本物だってのも、わかった」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…じゃあ、これから、するのは」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 俯き、声が詰まる

[ミーシャ] ミーシャ : 殺せ、と

[ミーシャ] ミーシャ : 私が、生きるなら

[ミーシャ] ミーシャ : 殺せ、と…

[ミーシャ] ??? : 「言ったはずだ」

[ミーシャ] ??? : 「お前も、一人の魔術師として扱われる、と」

[ミーシャ] ??? : 闇の中、声が響く

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「覚えてるよ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…"ライダー"」

[ミーシャ] ??? : カツカツ、と

[ミーシャ] ??? : 姿を表す、一人の

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 黒尽くめのサーヴァントが、そこに居た

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「ならば」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「生きるべきは、魔術師のやり方だけだ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…それも、覚えている筈だ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……魔術師の、やり方」

[ミーシャ] ミーシャ : ぼろ布を解いて、腕を露わにすると

[ミーシャ] ミーシャ : そこには、そのサーヴァントの掲げるマークと同一の紋章が浮かんでいる

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「殺して、奪ってでも」

[ミーシャ] ミーシャ : 「証明する事が、やり方だとしても?」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…お前も、俺も」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「それをしなければ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「奪われるだけだと、わかるだろうからな」

[ミーシャ] ミーシャ : 目を閉じて、拒絶したいと祈っても

[ミーシャ] ミーシャ : 記憶は、その言葉を肯定し

[ミーシャ] ミーシャ : この一つの家から

[ミーシャ] ミーシャ : 奪われた幻影を

[ミーシャ] ミーシャ : 壊された面影を

[ミーシャ] ミーシャ : そこに色褪せないまま見せていく

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…マスター」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「戦え、そして」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「生きろ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : そう伝えて

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 黒尽くめを闇に溶かして、もう一度姿を消した

[ミーシャ] ミーシャ : 「…私には」

[ミーシャ] ミーシャ : …そう、私には

[ミーシャ] ミーシャ : 祈ってもらえる、権利など…

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ : 寒々とした空の元、狭い家ながら久しく賑わう状態でそこに帰還した

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「どうぞ、おかけください」

[ミーシャ] 松坂さとう : ミーシャと黄猿に、頭を下げる。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……助かりました」

[ミーシャ] ミーシャ : 「狭い家ですけど…と」

[ミーシャ] マルクト : 「……あ、あの…先ほどは、ありがとうございました!」

[ミーシャ] 松坂さとう : ミーシャの言葉に頷き、近くにあったソファへ座る。

[ミーシャ] ミーシャ : 「…いえ、こちらの利を取った結果ですし何より」

[ミーシャ] マルクト : 同じように、ぺこりと頭を下げて。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……一つ、よろしいでしょうか」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ええ」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「ハッキリ言って、先程の加勢は……」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「貴方がたに"利"は無いはずです」

[ミーシャ] 黄猿 : 「…情勢からのものだねェ」

[ミーシャ] マルクト : 話を聞きながら、ソファーへと腰を下ろす。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「むしろ、加勢によるデメリットの方が大きい」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「情勢として考えたとしても……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…あの術士は、ひどく脅威でしたから」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「私とマルクトさんを捨て駒にし、あの時臣の魔力が尽きた後に息の根を止めればよかった、そうではありませんか?」

[ミーシャ] ミーシャ : 「生憎、此方の陣営も束ねて盤石とは言い切れませんし」
明け透けなく答えつつ

[ミーシャ] 松坂さとう : 「…………」

[ミーシャ] マルクト : 「……あのぅ、場にわきまえないんですが…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…私としては、見殺しは好まない…おや?」
マルクトに視線を向けて

[ミーシャ] マルクト : 「……もしかして、善意だったり……します?」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……」

[ミーシャ] 松坂さとう : ………見殺しは、好まない……ですか。

[ミーシャ] ミーシャ : 目を閉じて、少し考え込む

[ミーシャ] マルクト : 真面目な顔で。

[ミーシャ] 松坂さとう : はぁ。と溜息を一つ。

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『勿論、善意が無いとは言わないよ』

[ミーシャ] ミーシャ : …善意かどうか、言えるだろうか

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 冷静に答える

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……皆さん、これ……戦争、ですよ?」

[ミーシャ] ミーシャ : あの子を見捨てた私が

[ミーシャ] 松坂さとう : 試してみる。

[ミーシャ] 松坂さとう : 私は、知りたい。

[ミーシャ] 松坂さとう : この2人の真意を。

[ミーシャ] ミーシャ : 「…では、返すようですが」

[ミーシャ] 松坂さとう : 善意なのか、それとも"苦い"のか。

[ミーシャ] マルクト : 「……さとうさんだって、そうですよね」

[ミーシャ] ミーシャ : 「明日から戦争です、では気にせず殺してください、と」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……………。」

[ミーシャ] ミーシャ : 「受け入れられますか?」
これは、そのまま

[ミーシャ] 黄猿 : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…それを良しとしてでも勝ちたいと言うのがあるのなら、そうかもしれませんが」

[ミーシャ] 松坂さとう : ………その答えに、私は……。

[ミーシャ] マルクト : 「………」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「………叶えたい夢なら、ありますよ、ええ」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「ただ………」

[ミーシャ] 松坂さとう : マルクトに視線をやり。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「………"お人好し"を蹴散らしてまで得たいとは……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ふむ」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「思いませんね」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……私もですよ」

[ミーシャ] マルクト : 「……むう」

[ミーシャ] ミーシャ : 「何より、私は…」

[ミーシャ] マルクト : 「……それこそ、さとうさんだってお人よしですよね」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……」
じっと、マルクトの方を向く。

[ミーシャ] 松坂さとう : ……私が、お人好し……?

[ミーシャ] マルクト : 「それこそ、あなただって見捨てられたじゃないですか……私のこと」

[ミーシャ] 松坂さとう : こんな、独善の塊なのに。

[ミーシャ] ミーシャ : 「…まあ、そうですね」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……………」

[ミーシャ] マルクト : 「でも、手を取ってくれた」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…それに、さとうさん…でしたね?」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……目覚めが悪いだけですよ、貴女が死んでしまえば、ええ」

[ミーシャ] 松坂さとう : ミーシャの方を向く。

[ミーシャ] マルクト : 「それをお人よし、っていうんですよ」

[ミーシャ] マルクト : にこりと笑って。

[ミーシャ] ミーシャ : 「そも、そう言うのならお人好しとわからない相手には刃を向けられた筈です」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「────────」

[ミーシャ] 松坂さとう : ……私は──────。

[ミーシャ] ミーシャ : 「…それを選ばなかったのなら」

[ミーシャ] 松坂さとう : 席を立つ、さとう。

[ミーシャ] ミーシャ : 「……まだ…」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「………」
ミーシャらに、背を向ける。

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] マルクト : 「………」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……まだ戦争は続いています、それだけです」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] 松坂さとう : そうして、そのまま外へ───。

[ミーシャ] マルクト : 「……そうですね」

[ミーシャ] マルクト : 壮絶な戦争、それでも……私は私を示し続けられるのか。

[ミーシャ] ミーシャ : 「…戦争、ですか」

[ミーシャ] ミーシャ : ……戦火は

[ミーシャ] ミーシャ : 間違いなく、私たちを狂わせるというのに

[ミーシャ] マルクト : 「……浮かない顔ですね」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] マルクト : ちらりと、ミーシャの方を向いて。

[ミーシャ] ミーシャ : 「少し、思う所があるだけです」

[ミーシャ] ミーシャ : …何せ

[ミーシャ] ミーシャ : 私には、夢も何もありはしない

[ミーシャ] マルクト : 「………まあ、私だってそうですよ
思う所ありありです」

[ミーシャ] ミーシャ : 生きて、考えるしか無いのだから

[ミーシャ] ミーシャ : 「…この戦争で勝ちたい、のですよね」

[ミーシャ] ミーシャ : 「二人は」

[ミーシャ] マルクト : 「……ええ」

[ミーシャ] マルクト : 「…私の実力を示せる…と意気込んでいたのですが」

[ミーシャ] マルクト : 「……その機会も今だなく、驕っていただけなのだと……」

[ミーシャ] マルクト : 「…先ほどのお二人を見て、痛感しました」

[ミーシャ] ミーシャ : 「成る程」
考え方が、違うのだな

[ミーシャ] マルクト : …私は実力が伴わない。

[ミーシャ] ミーシャ : 魔術師として生きてたら、こうだったのだろうか?

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] マルクト : 魔術師としても、異端であろうその考え方。

[ミーシャ] ミーシャ : ちらりと、紋章に目をやる

[ミーシャ] マルクト : 結果を優先するのではなく、過程を優先。
だなんて、意味がない。

[ミーシャ] マルクト : 「………?」

[ミーシャ] ミーシャ : 魔術師たる証、同一証明…だが

[ミーシャ] マルクト : その紋章に目をやって。

[ミーシャ] ミーシャ : 「貴女は、魔術師さんでしたよね?」

[ミーシャ] マルクト : 「……ええ、最も…下級ですが」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…私も、そういう血筋だったと昔聞かされました」

[ミーシャ] マルクト : 「………ふむ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「しかし、結局…何も成さず、しかし質だけは良かったそうで」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…最終的に、私の父と母は殺され弟はその質だけを素材とするため、攫われました」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……私だけは、それを1人息を潜めてやり過ごしましたが」

[ミーシャ] マルクト : 「………なるほど」

[ミーシャ] ミーシャ : 「貴女は…」

[ミーシャ] マルクト : 「運よくあなたは生き残ることが出来たと」

[ミーシャ] ミーシャ : 「"らしく"無いのですね」

[ミーシャ] マルクト : そう言ったことは、この世界では”聞いた”がある。

[ミーシャ] ミーシャ : 「私は、魔術師というのは」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ひどく残酷だと、決めていましたが…」

[ミーシャ] マルクト : …体験しているわけでもなく、かといって起こしたこともない。
どこか絵空事のような、

[ミーシャ] マルクト : 「……まあ、そう言う人の方が多いと思います」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…この記憶も、経験も」

[ミーシャ] マルクト : 「私は……いつまで経っても、平凡な思考で
…上手くなじんでいないだけでもありますから」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「でも、しかし」

[ミーシャ] マルクト : 「………はい」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…貴女は、良い人みたいです」

[ミーシャ] ミーシャ : 「私は、違う…多分、他も違う」

[ミーシャ] マルクト : 「……そう、でしょうか…」
そんな事言われるのは……今までになかった。

[ミーシャ] ミーシャ : 「だって、そんな悩みを抱えるくらいには、らしくないのなら」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……案外、夢見は良さそうです」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「今一度聞かせてください」

[ミーシャ] マルクト : 「……は、はい!」

[ミーシャ] ミーシャ : 「勝って、何がしたかったんです?」

[ミーシャ] マルクト : その声に、再度向き直り。

[ミーシャ] マルクト : 「……私は…」

[ミーシャ] マルクト : 少しの間、口噤み。

[ミーシャ] マルクト : 「……きっと、自分自身を表したかったのだと思います」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…成る程」

[ミーシャ] マルクト : 「……噂に聞いた聖杯戦争、それに勝つことが出来れば私も認めてもらえるのだと…」

[ミーシャ] マルクト : 「…そう思って挑んでいたのですが、ちょっと…私には、まるっきり違う世界を見ているようでした」

[ミーシャ] マルクト : 「…あなたのような人も、初めて見ましたし」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……殺し合い、ですから」

[ミーシャ] ミーシャ : 「それも、自身の身に余る力を、手にして」

[ミーシャ] マルクト : 「……ええ、甘い考えだったのでしょう」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…なら」
…それなら?

[ミーシャ] ミーシャ : 「……もし、万が一」

[ミーシャ] マルクト : 「……ええ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「勝ってしまっても、貴女らしくいられますか?」

[ミーシャ] マルクト : 「………」

[ミーシャ] マルクト : 「わかりません、が」

[ミーシャ] マルクト : 「私は……血に濡れたとしても…」

[ミーシャ] マルクト : 「……私らしくある、そう決めました」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……」

[ミーシャ] ミーシャ : 一つ、懸念があった

[ミーシャ] マルクト : 「………っ」

[ミーシャ] ミーシャ : 私は、血に濡れて、力を与えられたら

[ミーシャ] ミーシャ : 多分、道を違えるかもしれない、だから

[ミーシャ] ミーシャ : 「…言い切って、くれますね」

[ミーシャ] マルクト : 魔力のぶつかり合いで体を揺さぶられて。
今も戦っているのであろうさとうのことを、思いながら。

[ミーシャ] マルクト : 「……はい」

[ミーシャ] マルクト : それで期待されたのなら、そうなってやる。

[ミーシャ] ミーシャ : …私は

[ミーシャ] ミーシャ : 負けていい、敗れていい

[ミーシャ] ミーシャ : 夢を見たくは無い、だから

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「勝てると、いいですね」

[ミーシャ] マルクト : 「……ええ、勝ちますとも」

[ミーシャ] マルクト : 「……人死にはなるべく出さない方向で!」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…相変わらず、らしくない」

[ミーシャ] マルクト : 「あはは……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「でも、まあ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「会えて良かったと、言わせてください」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…少なくとも、貴女みたいなのが居るなら」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……恨まずに済む、盲目なまま」

[ミーシャ] マルクト : 「……」

[ミーシャ] マルクト : 「…私はきっと、誰かを見捨てられない質ですから」

[ミーシャ] マルクト : 「…あなたも、また…その誰かの一人なんです」

[ミーシャ] マルクト : 「盲目だというなら、見る手伝いだってしてあげたいんですよ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…見えすぎてしまったら、私は私でいられるかはわからない」

[ミーシャ] ミーシャ : 「私は、ただの人です」

[ミーシャ] ミーシャ : 「運が悪かったかもしれないし、それなりに苦しんできたけど」

[ミーシャ] ミーシャ : 「ただの人でしか無い」

[ミーシャ] マルクト : 「……私だってそうですよ?」

[ミーシャ] ミーシャ : 「度の過ぎた苦痛は人を鈍らせます、余りある力は人を歪ませます」

[ミーシャ] ミーシャ : 「私は、多分」

[ミーシャ] マルクト : 「…ちっぽけでただの人。でも、きっと…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……」

[ミーシャ] ミーシャ : 眩しい、と言うやつなのだろう

[ミーシャ] マルクト : 「その人らしくあれるのもまた、私なんです」

[ミーシャ] マルクト : 「…あなただって、そうなんですよ」

[ミーシャ] ミーシャ : 希望は、あるのかもしれない

[ミーシャ] ミーシャ : …でも

[ミーシャ] ミーシャ : 「…だとしても、もう」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…希望を掴む意味は、私にはありませんから」

[ミーシャ] ミーシャ : …幻影は、拭えない

[ミーシャ] マルクト : 「……ありますよ、だって…」

[ミーシャ] マルクト : 「まだ終わってないじゃないですか、何も」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…そう、なのでしょうね」
そうだろう、貴女は終わっていない

[ミーシャ] ミーシャ : 「でも、私は」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…終わった後ですから」

[ミーシャ] マルクト : 「……もー」

[ミーシャ] マルクト : 「それなら、今ここにいる意味もないでしょう」

[ミーシャ] ミーシャ : 「ありますよ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「死ぬその日まで」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…私は、あの日を」

[ミーシャ] マルクト : 「でもその日はまだずっとずっと先です」

[ミーシャ] マルクト : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「見捨ててしまったあの日を」

[ミーシャ] ミーシャ : 「悔やみ続ける必要が、ありますから」

[ミーシャ] マルクト : ……言っていた、あの過去だろう。

[ミーシャ] マルクト : ……それでも……。

[ミーシャ] マルクト : 「あなただけが生き残れたんです」

[ミーシャ] ミーシャ : 「生き残れた事を、どう思えばいいのでしょう?」

[ミーシャ] ミーシャ : 「私は…」

[ミーシャ] マルクト : 「……その分生きればいいじゃないですか」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……」

[ミーシャ] マルクト : 「そう、悔やむ必要だってありません」

[ミーシャ] マルクト : 「……ただ、前だけ見るんです」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…前、を」

[ミーシャ] マルクト : 「難しいなら、まっすぐ立つだけも構いません」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…真っ直ぐ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「たとえ、先に何も無いとしても?」

[ミーシャ] マルクト : 「……何もないなら、作りましょう」

[ミーシャ] マルクト : 「作れないなら、その手伝いだってしますよ!なにせお人よし、らしいので」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…はは、成る程」

[ミーシャ] ミーシャ : 「そりゃあ、随分とお優しい…」

[ミーシャ] マルクト : ふふん、と自慢げに。

[ミーシャ] マルクト : 「…どうしても、難しいなら」

[ミーシャ] マルクト : すっく、と立ち上がって。

[ミーシャ] マルクト : 「……この戦争で勝ち残ってください
生き残ってください」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : それを

[ミーシャ] ミーシャ :

[ミーシャ] ミーシャ : 願うのが、そうか

[ミーシャ] ミーシャ : らしいのだろう、とても

[ミーシャ] ミーシャ : 「……生きて、ですか」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…それは」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……それなら、出来る」

[ミーシャ] マルクト : 「ふふ」

[ミーシャ] マルクト : 「その意気です!」

[ミーシャ] マルクト : 「それが、まっすぐ立つってことですから」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…成る程」

[ミーシャ] ミーシャ : 「意外と、普通なんだ」
くすりと笑う

[ミーシャ] 松坂さとう : コンコン、部屋の扉へノックが。

[ミーシャ] マルクト : 「そうですね、案外普通です」

[ミーシャ] マルクト : 「……おや」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…あら」

[ミーシャ] 松坂さとう : そこへ、静かな表情のさとう……いや。

[ミーシャ] ミーシャ : 「お戻り、ですか」

[ミーシャ] 松坂さとう : 決意を固めた少女が。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……ええ、私のサーヴァントが暴走をしておりまして、その処置に入っておりました」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…バーサーカーが、暴走」

[ミーシャ] 松坂さとう : 頷く。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……そしてもう、魔力の維持は不可」

[ミーシャ] マルクト : 「………さとうさん、まさか…」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「私ももうじき脱落、ですね」
2人に笑みを見せる。

[ミーシャ] マルクト : ごくりと唾を飲む。

[ミーシャ] ミーシャ : 「…何をする気で」

[ミーシャ] マルクト : 「…………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「そう、ですか」

[ミーシャ] マルクト : あの戦いぶりは、壮絶だった。
だからその分魔力の消耗は激しい、そう考えていたが……

[ミーシャ] マルクト : 「…死に、ませんよね?」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……どこかのお人好しさんが、叶えたい夢、見つけたい夢があるそうですからねぇ」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……さぁ、どうでしょうね……」
マルクトに。

[ミーシャ] ミーシャ : 「……」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……ただ、私も死ぬつもりはありません、が……」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「"絶対"は、無いでしょうね」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ええ」

[ミーシャ] 松坂さとう : そうして、ポケットから一枚の写真と、鍵をテーブルの上に置く。

[ミーシャ] ミーシャ : 「…これは?」

[ミーシャ] 神戸しお : そこには、可愛らしい少女の写真が。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……私だけの、"ハッピーシュガーライフ"です」

[ミーシャ] マルクト : 「……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「もし、私に何かあれば……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「さとうさん」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……よろしくお願いしますね」

[ミーシャ] 松坂さとう : ニコ、と笑う。

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」
顔を、歪ませる

[ミーシャ] マルクト : 「それは、断ります」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「………何故です」

[ミーシャ] マルクト : 「だって、承諾してしまえば…」

[ミーシャ] マルクト : 「あなたはきっと、死地に赴く」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…家族なんですよね」

[ミーシャ] マルクト : 「……それは、この子のためだと思うんですか?」

[ミーシャ] ミーシャ : 「生きているのに、手が届くのに」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…手放すなどと、言わないでください」

[ミーシャ] マルクト : ミーシャの言葉にこくりと頷き。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……分かりました……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「もし」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「出来る限りは、生きて帰ってこれるよう尽力しますよ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「その鍵と写真は、持ってください」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…本当に、本当にもしもの時がくるとしても」

[ミーシャ] 松坂さとう : ふぅ。と溜息を吐き。
写真と鍵を大人しく回収する。

[ミーシャ] マルクト : 「あなただって……立ち続けられるんですから」

[ミーシャ] ミーシャ : 「その時は、託されたからでなく」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……ええ、ええ、分かりましたよ……お人好しの2人方」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「どこまでの貴女方は」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「"甘い"んですね」
決して、苦くない。

[ミーシャ] マルクト : 「3人、じゃないですか?」
にやりと笑って。

[ミーシャ] 松坂さとう : そうして、踵を返そうとして。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「…………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……そうでしか、生きていないから」

[ミーシャ] 松坂さとう : フッ、と笑いを零し。

[ミーシャ] 松坂さとう : 部屋の扉の奥へ。

[ミーシャ] 松坂さとう : ……の前に

[ミーシャ] マルクト : …お人よしでもなければ、ここに二度と現れる必要はなかったからだ。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……皆さんと会えて、良かったです」

[ミーシャ] 松坂さとう : そう言い残し、姿を消した。

[ミーシャ] ミーシャ : 「……ええ」

[ミーシャ] マルクト : 「………こちらこそ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…話し込んで、しまった」

[ミーシャ] マルクト : 「……ええ、でも…」

[ミーシャ] マルクト : 「悪くない時間でした」

[ミーシャ] ミーシャ : 「それなら何より」

[ミーシャ] ミーシャ : 「私にとっても…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「久しく、客を上げたので」

[ミーシャ] マルクト : ふふ、と笑って。

[ミーシャ] マルクト : 「……またお邪魔させてください」

[ミーシャ] マルクト : そのまま、背を向けて。
扉へと歩を進める。

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ええ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「今度は、お茶を出しましょう」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…弟が好きだった、お茶があるんです…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…また、来てくださいね」

[ミーシャ] マルクト : 開ける直前に、足が止まって。

[ミーシャ] マルクト : 「……それは是非、楽しみです」

[ミーシャ] マルクト : もう一度だけ顔を見せて、にこり。

[ミーシャ] マルクト : 残りは、扉の先に。

[ミーシャ] ミーシャ : …久しく笑い返して

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…満足したか」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ええ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「"私"は生きます」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…そうします」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「……そうか」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「なら、気を張れ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…俺は、果たす」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…私も、果たしましょう」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : その答えに満足したか

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : するりと、姿を消す

[ミーシャ] ミーシャ : そして

[ミーシャ] ミーシャ : 最後に一人

[ミーシャ] ミーシャ : 何かに備えて、瞳を閉じた

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ : ライダーの傷を見つつ、裏で

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ライダー、顔にも傷が出来ている」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…治療する程でもない、気にするな」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 私は、ライダーのマスターだけど

[ミーシャ] ミーシャ : …ライダーの顔を知らない

[ミーシャ] ミーシャ : 「私が気になるのに」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…いいか」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「この時だけの縁だ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「故に、残るものは少なくあるべきだ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ライダー」

[ミーシャ] ミーシャ : ライダーは、英雄というにはどうにも近しい

[ミーシャ] ミーシャ : …だが、時に

[ミーシャ] ミーシャ : 酷く距離を置いているのを感じる

[ミーシャ] ミーシャ : …その理由は知らないというのに

[ミーシャ] ミーシャ : 「…わかった」

[ミーシャ] ミーシャ : 「でも、汚れは洗ってね」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「わかってる」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「大事な家だろ、敷地を汚す気はない」

[ミーシャ] ミーシャ : 目の前で土埃を払う

[ミーシャ] ミーシャ : その姿は…消して大きなものではない

[ミーシャ] ミーシャ : この地で争う英雄とは違って

[ミーシャ] ミーシャ : 私のように、酷く小さく見える

[ミーシャ] ミーシャ : 「ねえ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「なんだ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…何も残さないとは、言うけど」

[ミーシャ] ミーシャ : 「せめて名前だけは」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…最後でいいから、教えて」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 酷く困ったようにして

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : しかし

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : その目は懐かしい物を見るようで

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「"最期"でなければ、考えておく」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…言葉遊びのつもり?」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「先の見えない事の中で、そんな事を言うなという事だ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「わかったよ…」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 頷いて

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : そのまま、先に姿を消す

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「どうしてそこまで」

[ミーシャ] ミーシャ : そう呟いて

[ミーシャ] ミーシャ : 同じく姿を消すのだった

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ : ころした

[ミーシャ] ミーシャ : 殺した

[ミーシャ] ミーシャ : 私の考えで

[ミーシャ] ミーシャ : 私の指示で

[ミーシャ] ミーシャ : 殺した

[ミーシャ] ミーシャ :

[ミーシャ] ミーシャ : 断末魔だったかどうかは、わからない

[ミーシャ] ミーシャ : だが

[ミーシャ] ミーシャ : その声は鮮明に残っている

[ミーシャ] ミーシャ : 彼の望みだったのかもしれない

[ミーシャ] ミーシャ : だが

[ミーシャ] ミーシャ : それをさせたのは、私だ

[ミーシャ] ミーシャ : 覚悟は

[ミーシャ] ミーシャ : していた筈だ

[ミーシャ] ミーシャ : …だが

[ミーシャ] ミーシャ : だが、だが、だが

[ミーシャ] ミーシャ : …その瞬間を見る覚悟は

[ミーシャ] ミーシャ : 無かった、まだ無かったのだ

[ミーシャ] ミーシャ : 「ぅ、あああっ、おあ…ぇえ…」

[ミーシャ] ミーシャ : 吐き出しても吐き出しても悍ましい感覚が残っていて

[ミーシャ] ミーシャ : 口に残る吐しゃ物は、赤く染まって見えて

[ミーシャ] ミーシャ : 「…どうして?」

[ミーシャ] ミーシャ : 逃げられたはずだ、そうならなくてもよかったはずだ

[ミーシャ] ミーシャ : 殺し合いだが、確実に死ぬわけじゃなかったはずだ

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「マスター」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : その様子を見て、呟く

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「"そういうものだ"」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「不条理も、理不尽も」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「測り切れない何もかも」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ライダーは…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「何も感じて、居なかったの?」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「いや」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…殺す気だった、そうせねば死ぬからだ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ライ、ダー…」

[ミーシャ] ミーシャ : …いや

[ミーシャ] ミーシャ : 当たり前だろう

[ミーシャ] ミーシャ : ライダーは、そう言った存在だから

[ミーシャ] ミーシャ : ソレを交えたのは

[ミーシャ] ミーシャ : 私の判断なのだから

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「忘れられないのなら」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「覚えるしかない、全ては同じだ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…もう、同じじゃない」

[ミーシャ] ミーシャ : 「同じなのは、魔術師だ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…あの日」

[ミーシャ] ミーシャ : 「自分たちの為だけに、命を奪った魔術師と!同じ…!」

[ミーシャ] ミーシャ : フラッシュバック

[ミーシャ] ミーシャ : 交差する記憶は

[ミーシャ] ミーシャ : 死、死、死、死、闇の中

[ミーシャ] ミーシャ : 肉の裂ける音、大地が爆ぜた音

[ミーシャ] ミーシャ : 重なる、死の瞬間

[ミーシャ] ミーシャ :

[ミーシャ] ミーシャ : 「アレックス…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「私は…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「もう、貴方を…」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「やめろ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ライダーは、優しいね」

[ミーシャ] ミーシャ : 「でも」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…私は、私は…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「そうは生きられない、よ…」

[ミーシャ]   : 「じゃあ、そうすればいいだろぅ?」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…?」

[ミーシャ]   : 声が、届いた。笑い声。

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…!」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「誰だ…!」

[ミーシャ]   : カツカツと、音が鳴る。下駄の足音。

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ]   : 暗がりから現れたのは。

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…名乗れ」

[ミーシャ]   : ……紅い仮面をつけた、上半身半裸の男。

[ミーシャ] ??? : 「名乗る?」

[ミーシャ] ??? : 「どうしてその必要がある?」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…っ」

[ミーシャ] ??? : 「お前たちは殺し合っている。名を隠し、素性を隠し、願いを隠し」

[ミーシャ] ??? : 「殺し合っている」

[ミーシャ] ??? : 「これは『戦争』だ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…そうだな」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「随分と長らく姿を隠していたようだ」

[ミーシャ] ??? : 爛々と目を輝かせ、白い蓬髪を振り乱し。

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「このように相まみえるか、見知らぬサーヴァント…」

[ミーシャ] ??? : 「ははは」

[ミーシャ] ??? : 「違う、違うねライダー。違うんだよ」

[ミーシャ] ??? : 「隠れていたんじゃない」

[ミーシャ] ??? : 「『待っていた』のさ」

[ミーシャ] ??? : 「だってこれは」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…そうか」

[ミーシャ] ??? : 「戦」

[ミーシャ] ??? :    「争」

[ミーシャ] ??? : 「な」
  「ん」
 「だ」
「か」
   「ら」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「お前は随分と"らしい"やつだ」

[ミーシャ] ??? : 「あはははははは!」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「あの騎士とも」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「あの術士とも違う…!」

[ミーシャ] ??? : 「ああ、違うさ、違うとも。全然違う」

[ミーシャ] ??? : 「お前と同じだ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…!」

[ミーシャ] ??? : 「人殺し共」

[ミーシャ] ??? : やけに長く白い指をつきつけて。

[ミーシャ] ??? : ケタケタと笑う。

[ミーシャ] ??? : 「なんつってな」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…今更…!」

[ミーシャ] ミーシャ : その一言に、ふらりと

[ミーシャ] ミーシャ : 「…貴方も、殺す側か」

[ミーシャ] ミーシャ : 「この戦争の中で、殺す側の…」

[ミーシャ] ??? : 「それを選ぶのはお前さ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「違う、殺したのは私だ…!」

[ミーシャ] ??? : 「違わないね」

[ミーシャ] ??? : 「『殺せ』といったんだ」

[ミーシャ] ??? : 「『殺す』から参加したんだ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…違う、意思等…」

[ミーシャ] ??? : 「お前たちはみんな同意の上で参加している。これがお茶会だとでも思ったか?」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ??? : 「俺達は最初から承知してるんだ」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『…その理屈じゃあ』

[ミーシャ] ??? : 「おお!?」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『先のギム氏を殺したのは私という事になるね』

[ミーシャ] ミーシャ : 「ライダー、さん」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…アサシン、さん…」

[ミーシャ] ??? : ばっと大袈裟に宙返りして飛びのいて見せて、ガードレールの上に高下駄で飛び乗る。

[ミーシャ] ミーシャ : 「………私は」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『頭蓋砕き氏と共に連れてきて、戦闘に参加させてしまった』

[ミーシャ] ミーシャ : 「違う」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『……完全に私の実力不足だ
申し訳ない』

[ミーシャ] ミーシャ : 「違う、違う……違う」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 頭を下げる

[ミーシャ] ??? : 「あははははは」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「……マスター…マスター!」

[ミーシャ] ミーシャ : 「そうだ、知っていたんだ……知っていたはずだ…」

[ミーシャ] ??? : 「違うだろう? お為ごかしはよせよ色男」

[ミーシャ] ミーシャ : 「この戦争は、この戦争は…」

[ミーシャ] ??? : 「そうだ、彼女は知っていたんだ!!」

[ミーシャ] ??? : 「さぁ、口にしろ! 高々と!!」

[ミーシャ] ミーシャ : 「教会に行けば、ハナから棄権出来た!」

[ミーシャ] ミーシャ : 「だけど…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「そうか、願ってたのか」

[ミーシャ] ミーシャ : 「押しのけてまで、殺してまで…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…あの日が、戻ってくることを…」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『………』

[ミーシャ] ??? : 「そ」
  「う」
    「だ」

[ミーシャ] ??? : ミーシャの背後に。

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…ッ」

[ミーシャ] ??? : それは、いた。

[ミーシャ] ??? : 「お前は望んだんだ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ぁ」

[ミーシャ] ??? : 「何人殺してでも、何人押しのけてでも」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ??? : 「『それ』を手にするって」

[ミーシャ] ??? : 「……望んだのさ」

[ミーシャ] ??? : 「俺のようになぁ!」

[ミーシャ] ??? : 「アッハハハハハハ!」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…アレックス、アレックス…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「私が…こんな事願ってももう…」

[ミーシャ] ??? : 「さぁ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…戻れないんだ」

[ミーシャ] ??? : 「選択の時だ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「ごめん、なさい」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「ねえ、貴方は」

[ミーシャ] ミーシャ : 「押しのけてでも、行くの?」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「何を…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「ライダーは知っている」

[ミーシャ] ミーシャ : 「押しのけてでも、選ぶんだって」

[ミーシャ] ミーシャ : 「じゃあ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「白い髪の、貴方は?」

[ミーシャ] ??? : 「答えを何で欲しがる?」

[ミーシャ] ??? : 「なぁ、色男も思わないか?」

[ミーシャ] ??? : 「ここは何をする場だ?」

[ミーシャ] ??? : 「俺達は何のために集まった?」

[ミーシャ] ??? : 「『答え』は出てるだろ?」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『戦争をするためだね』

[ミーシャ] ミーシャ : 「"勝ちたい"」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 当然のように言う

[ミーシャ] ??? : 「そう!! 戦争!!」

[ミーシャ] ??? : 「戦争だ!! そしてぇ!!!」

[ミーシャ] ??? :  

[ミーシャ] ??? : 「戦争で人が死ぬのは当たり前のことだ」

[ミーシャ] ??? :  

[ミーシャ] ミーシャ : 「…そうか」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…結局、そうなのか」

[ミーシャ] ??? : 「弾倉に弾をこめ、撃鉄を上げ、トリガーに指をかけ、銃口を向けて!!」

[ミーシャ] ??? : 「その上、凶弾を放ってまで!!」

[ミーシャ] ??? : 「それでこういうつもりか?」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「黙れ、黙れ…!マスター…!」

[ミーシャ] ??? : 「『殺す気はなかった』」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『……諦めるな』

[ミーシャ] ミーシャ : 「…言わないよ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「そうでしか、ない」

[ミーシャ] ミーシャ : 「殺したくないのに、殺せないのに…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…"あの時"、何かできるはずは無かった」

[ミーシャ] ??? : 「さぁ、わかったなら」

[ミーシャ] ??? : 「選択しよう」

[ミーシャ] ミーシャ : 「身を縮めて、怯えてたから」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「殺すよ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…殺して、魔術師のやり方でも」

[ミーシャ] ミーシャ : 「テロリストのやり方でもいい」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…願いが叶うなら、それだけの価値があるんだって…してたんだから」

[ミーシャ] ??? : 目を、大きく見開いて。

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『……諦めるんじゃ、ない』

[ミーシャ] ??? : 「それでいい」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…マス、ター」

[ミーシャ] ??? : 「色男、諦めるんじゃあないぜ、これはな」

[ミーシャ] ??? : 「決断というんだ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ごめんね、アサシンさん」

[ミーシャ] ??? : 右手の人差し指を青年に、左手の人差し指を少女に。
それぞれ向けて。

[ミーシャ] ミーシャ : 「でも私は…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「"そうしたい"と思ってしまったから」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『…必要に駆られていない物を、執拗に駆り立てて』

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…後悔するぞ」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『そうである、と思わせる』

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「総てに後悔するだろう」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『私が、最も憎むものだ』

[ミーシャ] ??? : 「アッハハハハハ!!!」

[ミーシャ] ??? : 「軍師のアンタがそれをいうのか?」

[ミーシャ] ??? : 「何人殺した、色男」

[ミーシャ] ??? : 「両手をかしてやろうか?」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」
アサシンを見る

[ミーシャ] ??? : 「それでも数えきれないだろうに」

[ミーシャ] ??? : 「なぁ?」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『…』

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『けれどね、私は』

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『民主主義を、人の理性を』

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『信じたいと…心から思っているよ』

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…人の理性、か」

[ミーシャ] ??? : 「ははははは!!」

[ミーシャ] ??? : 「理性!! 理性か!!」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…そんなもの」

[ミーシャ] ??? : 「いいねぇ! 俺もそいつを信じているとも!! だからこそ!」

[ミーシャ] ??? :  

[ミーシャ] ??? : 「理性で殺し合え」

[ミーシャ] ??? :  

[ミーシャ] ??? : 「選んで殺し合うんだ、やらなくてもいい殺戮をやるんだ」

[ミーシャ] ??? : 「聖杯? 願い? 理想?」

[ミーシャ] ??? : 「おいおいおいおいおい」

[ミーシャ] ??? : 「願望器なんてズルに手を出してる時点で」

[ミーシャ] ??? : 「俺達はみんな罪人なのさ」

[ミーシャ] ??? : 大きく飛び退き。

[ミーシャ] ??? : 「なんつってな」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」
そちらを見る

[ミーシャ] ??? : 天狗を思わせる紅い面の鼻を揺らして、肩を竦めた。

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…何が、言いたい…!」

[ミーシャ] ??? : 「選べといっているのさ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ??? : 「これからあと何人殺すのか」

[ミーシャ] ??? : 「スッパリ諦めてお家に帰るのか」

[ミーシャ] ??? : 「あれあれあれぇ?」

[ミーシャ] ??? : 「……理性的な選択ってなんだろぅなぁ?」

[ミーシャ] ??? : 「なんつってな」

[ミーシャ] ??? : 闇に姿を消して。

[ミーシャ] ??? : 仮面の男の声が響く。

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ??? : 「そういえば名乗ってなかったな」

[ミーシャ] ??? : 「そうだな、名前、名前か」

[ミーシャ] ??? : 「ではこう名乗ろう」

[ミーシャ] ??? : 「俺の名はピノ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「……ピノ」

[ミーシャ] ピノ : 「ピノ・ブラフマン」

[ミーシャ] ピノ : 「お前達と同じ」

[ミーシャ] ピノ : 「大嘘吐きさ」

[ミーシャ] ピノ : 「なんつってな」

[ミーシャ] ピノ : 「アッハハハハハハハ!!」

[ミーシャ] ピノ : 笑声だけを残して。

[ミーシャ] ピノ : ピノは……消えた。

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「………くっ…」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『…』

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「………何故だ、何故あのような奴が…」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『…まず、分かっている事は』

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『アレは、止めないといけないね』

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…ああ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「そう」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「マスター…今の話は」

[ミーシャ] ミーシャ : 「分かってる」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「……っ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「生きろと言ったはずだ…」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「忘れるな、それだけは」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………そうね、ライダー」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『…私からも、一つ』

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」
アサシンを見る

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『これから先、あの怪物と戦う時…
きっと私は君に戦闘を命じてしまうと思う』

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『その時に…君は…戦うかい?』

[ミーシャ] ミーシャ : 「………戦うでしょう」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「マスター…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「結局」

[ミーシャ] ミーシャ : 「私は綺麗ごとを言ってただけです」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…だから」

[ミーシャ] ミーシャ : 「なるべくして、なっただけです」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 『………そうかい』

[ミーシャ] ミーシャ : 「ええ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : ただ、俯いて

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「……何も言わん」

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : その姿に、自分の年若い里子の影を見て

[ミーシャ] 『不敗の青年』 : 誰もいない場所で、自分の無能さを改めて噛みしめた

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「ライダー」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「心配を掛けましたね」

[ミーシャ] ミーシャ : 「もう」

[ミーシャ] ミーシャ : 「悩みませんから」

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…マスター」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…こうするしかないでしょう」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…何故」

[ミーシャ] ミーシャ : 「もう、わかり得ない」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「それに」

[ミーシャ] ミーシャ : 「彼だって、もう期待はしない」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「………」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…マスター」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 黒ずくめの奥で瞳が揺れた

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 :  

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 :  

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : なあ

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 今、何を考えている?

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 苦しいのか、後悔してるのか

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : それとも、決断したのか?

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : お前の決断は…

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 :

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : いや

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 私には

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 何も言えない事だ

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : だが…

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 俺は…

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 :  

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 :  

[ミーシャ] 松坂さとう :  

[ミーシャ] 松坂さとう :  

[ミーシャ] 松坂さとう :  

[ミーシャ] 松坂さとう : 裏路地。

[ミーシャ] 松坂さとう :  

[ミーシャ] 松坂さとう :  

[ミーシャ] 松坂さとう :  

[ミーシャ] 松坂さとう : ひと気の無い、埃っぽい通路。

[ミーシャ] ミーシャ : そこに一人、何かを待ち佇んでいる

[ミーシャ] 松坂さとう : 心を掻き毟った少女───ミーシャの歩みを進める先に
"犯罪者"……松坂さとうは、壁に背を傾け、じっと見ていた。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「───行くんですね」

[ミーシャ] ミーシャ : 「ええ」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「かつて信頼し合っていた彼との、決別のために」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「………それが貴女の居場所となるのであれば、私からかける言葉は一切ありませんよ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「───どうぞ、お人好しのミーシャさん」

[ミーシャ] ミーシャ : 「信頼は無いですよ」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…お人好し、ですか」

[ミーシャ] ミーシャ : 「言ってしまえば」

[ミーシャ] 松坂さとう : ミーシャの瞳をじっと見つめる、さとうの赤い眼。

[ミーシャ] ミーシャ : 「ただの、罪逃れだったのでしょう」

[ミーシャ] ミーシャ : 「あの時見捨てた、だから」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…見苦しい事」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「はぁ」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「……そうですか」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「では行ってらっしゃいませ」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「私に掛けてくださった言葉も、罪逃れだったのであれば」

[ミーシャ] 松坂さとう : 苦い。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「どうぞ、ごゆっくり」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「その手を血で汚してきてください」

[ミーシャ] ミーシャ : 「ええ」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「───そして」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「…………」

[ミーシャ] 松坂さとう : 言いかけた言葉を、呑む。

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] 松坂さとう : その言葉は、私から授けるものではない。

[ミーシャ] 松坂さとう : 相応しい人物がいる。

[ミーシャ] 松坂さとう : 「………ミーシャさん」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「もし、"本当の願い"を見つけたその時は」

[ミーシャ] 松坂さとう : 「貴女と楽しくお話したいです」

[ミーシャ] 松坂さとう : ニコ、と笑い。

[ミーシャ] ミーシャ : 戦場へ向かいながら、その言葉を聞いて

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 何も言わず

[ミーシャ] ミーシャ : 去っていった

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ :

[ミーシャ] ミーシャ : ………

[ミーシャ] ミーシャ : なぜ

[ミーシャ] ミーシャ : 生きている

[ミーシャ] ミーシャ : どうして生きている?

[ミーシャ] ミーシャ : なんで

[ミーシャ] ミーシャ : なんで?

[ミーシャ] ミーシャ : ………

[ミーシャ] ミーシャ : 私は

[ミーシャ] ミーシャ : 私は…

[ミーシャ] ミーシャ :

[ミーシャ] ミーシャ : 「ライダー」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 佇んで、眺めている

[ミーシャ] ミーシャ : 「殺せ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 「殺して」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「引き金を引いて」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「れい」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「ふざけるな」
ミーシャを蹴り上げる

[ミーシャ] ミーシャ : 「ぐふぇッ、あッ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「………」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「これ以上の醜態があるか」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「散々付き合って、最後はマスター殺しか」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「ふざけるな」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「最後の約束を」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「私の手で破り捨てろと?」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…ライ、ダー」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「生きろ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「生きてみろ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「醜態を晒せばいい」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「後悔し続ければいい」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「楽になれると思うな」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : よろよろと、立ち上がり

[ミーシャ] ミーシャ : 「どうしろと、言うんですか」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「決めたんだろ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「殺すと喚いたんだろ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……」

[ミーシャ] ミーシャ : 「もう」

[ミーシャ] ミーシャ : 「いやだ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「………何がだ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「つかれたんだよ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………望むのも」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………諦めるのも」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………………生きていく事も」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「私は」

[ミーシャ] ミーシャ : 「……誰もかれも不幸にしただけだ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「ただ、不幸を振り撒いて」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………何にも耐えられないから、何も見なかったんだよ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………殺して、ください」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「ダメだ」

[ミーシャ] ミーシャ : 「殺して」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「断る」

[ミーシャ] ミーシャ : 「………貴方は」

[ミーシャ] ミーシャ : 「何が、楽しくて」

[ミーシャ] ミーシャ : 「私なんかに、従ったんですか」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「………」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「さあな」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : そうして、姿を消していく

[ミーシャ] ミーシャ : 「………」

[ミーシャ] ミーシャ : 「…」

[ミーシャ] ミーシャ : 膝から崩れ落ちて

[ミーシャ] ミーシャ : ただ、呆けて、眺めていた

[ミーシャ] ミーシャ : もう何もない、たった一人の部屋を

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ピノ : 「へいへいへい」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…またか」

[ミーシャ] ピノ : 「まぁ、そう邪見にするなって、いい話があるんだよ」

[ミーシャ] ピノ : 馴れ馴れしく肩を組む。

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…」

[ミーシャ] ピノ : 「なぁ、俺の勘違いなら悪いんだけどさ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「いい話か、こんなどん底でもあるものだな」

[ミーシャ] ピノ : 「ライダー、アンタ本当は後悔してんじゃないか?」

[ミーシャ] ピノ : 「……こんな戦争に可愛いマスターを参加させちまったことにさぁ?」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「……後悔、か」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「………甘く見られた物だな」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「……」

[ミーシャ] ピノ : 「俺の願いはなんだか教えてやろうか?」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…聞いておく」

[ミーシャ] ピノ : 「昔々あるところにとある男がいました。男は幸せでした」

[ミーシャ] ピノ : 「でも恋人が魔術師でした」

[ミーシャ] ピノ : 「彼女とその男は幸せに過ごしてました。しかし、家訓には逆らえません」

[ミーシャ] ピノ : 「……『根源』に至るというくだらない家訓」

[ミーシャ] ピノ : 「でもそれは構いませんでした。どうせ不可能だからです」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…魔術師らしい事だな」

[ミーシャ] ピノ : 「だから男も女も魔術師らしく切磋琢磨して魔術回路を鍛え上げ、切磋琢磨して次世代に託すという由緒正しい方法をとることにしていました」

[ミーシャ] ピノ : 「……しかし」

[ミーシャ] ピノ : 声が、低くなる。

[ミーシャ] ピノ : 「――その一代で何とかできるかもしれない方法が見つかってしまいました。その巨大儀式の名は」

[ミーシャ] ピノ : 「聖杯戦争」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「聖杯、か」

[ミーシャ] ピノ : 「女は御家の決定に逆らえず、聖杯戦争に駆り出されました。男も渋々参加しました」

[ミーシャ] ピノ : 「立派な当主の家柄の女は必勝を期して、男に最良のサーヴァントの召喚素材を探してくるよう頼みました。男もその期待に応えました」

[ミーシャ] ピノ : 「結果、とても素晴らしいセイバーを召喚する事に成功し」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…!」

[ミーシャ] ピノ : 「そのせいで危険視されてより優秀な魔術師にあっさり殺されましたとさ」

[ミーシャ] ピノ : 「めでたしめでたし」

[ミーシャ] ピノ : 「……さぁ、誰が悪いんだこの話?」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「……」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「敢えて、選ぶならば」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「始まりに遡り続けて、全てが罪を背負うだろう」

[ミーシャ] ピノ : 「そうだ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…それだけ、根は深いだろうな」

[ミーシャ] ピノ : 「だからな」

[ミーシャ] ピノ : 「俺はこんな儀式はぶっ潰してやりたいんだ」

[ミーシャ] ピノ : 「『復讐』して『台無し』にしてやりたいんだよ」

[ミーシャ] ピノ : 「なぁ、アンタもさ」

[ミーシャ] ピノ : 「こう思わないか?」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…」

[ミーシャ] ピノ : 「そもそも聖杯なんかなくなっちまえば」

[ミーシャ] ピノ : 「……あの甘ったるいマスターはもう人殺しなんてしなくて済むぜ?」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…」
軽く、俯き

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「死に場所にするとしても、まあ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「悪くない理由と、受け取らせてもらう」

[ミーシャ] ピノ : 「ひひひ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…所詮」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「惨たらしく死ぬか」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「惨めに死ぬかだ」

[ミーシャ] ピノ : 薄い笑みを漏らす。

[ミーシャ] ピノ : 「俺とアンタは似てるんだ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…似ている、か」

[ミーシャ] ピノ : 「どっちも『大事な人』が『望まぬ戦争に巻き込まれて酷い目に遭った』んだ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「……大事な人、か」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「………」

[ミーシャ] ピノ : 「……なぁ、俺はさ、勝ちなんかどうでもいいんだ」

[ミーシャ] ピノ : 「ただこんな儀式がぶっ潰れればいいんだ」

[ミーシャ] ピノ : 「利害は一致してないか?」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…同意しておこう」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「私は元より、英霊等では無い」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…テロリストだと言うのだ、なら」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「それでいい」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…話は受ける」

[ミーシャ] ピノ : 「ひひひ」

[ミーシャ] ピノ : 「いーい返事だ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「マスターは、選べないだろう」

[ミーシャ] ピノ : 「そういうことだ」

[ミーシャ] ピノ : 「サーヴァントとマスターの出会いは……運命だ」

[ミーシャ] ピノ : 「誰も運命を選べない」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…運命、か」

[ミーシャ] ピノ : 「だけどな、ライダー」

[ミーシャ] ピノ : 「『復讐』はできるんだ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「……」

[ミーシャ] ピノ : 「さぁ、叩き潰しにいこうぜ」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「…分かっている」

[ミーシャ] ピノ : 「選択の時だ」

[ミーシャ] ピノ : 「舞台は整ってる」

[ミーシャ] 【頭蓋砕き】 : 「終わるだけだ、何もかも」

[ミーシャ] ピノ : 「そうだ、俺達は願いをかなえるものじゃない」

[ミーシャ] ピノ : 「願いを」

[ミーシャ] ピノ :  

[ミーシャ] ピノ :  

[ミーシャ] ピノ : 「終わらせるものだ」

[ミーシャ] ピノ :  

[ミーシャ] ピノ :  

[ミーシャ] ピノ :  

[ミーシャ] ピノ : 「なんつってな」

[ミーシャ] ピノ :   

[ミーシャ] ピノ :  

[ミーシャ] ピノ :  

[ミーシャ] ミーシャ : …ただ、一人

[ミーシャ] ミーシャ : 全てが、終わる様を

[ミーシャ] ミーシャ : 見届ける為か

[ミーシャ] ミーシャ : …屋敷には、誰一人残らなかった

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] ミーシャ :  

[ミーシャ] : その種が落ちる。

[ミーシャ] : その行く末は、孤独でない少女の元へ。

[ミーシャ] : ………『ただ生き続ける』のエゴを果たす道を開かんと。

[ミーシャ] :  

[ミーシャ] :  

[ミーシャ] :